外壁塗装をする際に火災保険は使えるの?申請内容や方法を徹底解説
外壁の塗装工事には、火災保険が適用されることがあります。適用されれば、工事費用の大きな節約になります。適用されるための3つの条件をみていきましょう。
自然災害が原因の被害である
自然災害によって外壁や屋根が破損してしまった場合に適用されます。おもな事例はこちら。
事例1:風災
- 台風や竜巻によって外壁が崩れたり屋根が飛ばされてしまった
- 強風で飛んできたもので外壁・屋根が破損してしまった
事例2:雪災
- 大雪で屋根材が割れてしまった
- 屋根から落下した雪で外壁や設備が破損してしまった
事例3:落雷
- 屋根に雷が落ちて穴が空いてしまった
- 落雷によって火災が発生した
事例4:火災
- 自宅の火事や隣家からのもらい火などで外壁や屋根が燃えてしまった
(地震による火事は適用されません)
なお、洪水や高潮などの水害は適用外になることが多いですが、豪雨で近くの山が土砂崩れを起こし、建物の半分以上が破損するような事例では適用されることもあります。
3年以内におこったトラブルである
火災保険が適用されるのは、3年以内に起こった被災による補修工事のみです。また、すでに工事をおこなっていても、3年以内ならあとから保険金を請求することができます。
保険法による「消滅時効」によって補償期間が決められていて、ほとんどの場合は3年間です。ただし、保険会社によって異なることもあるため確認しておくとよいでしょう。
損害額が20万円以上である
保険法では、「免責金額」といわれる金額が決められています。この金額を下回る補修工事は自己負担でおこなう基準になります。ほとんどの保険会社では20万円前後を設定しています。損害額が20万円以下の場合には、火災保険の適用外になります。
外壁塗装ができる火災保険にはどんな種類があるの?
火災保険によっても補償してもらえる範囲が異なってきます。加入している火災保険の種類と補償内容のポイントをしっかり押さえておきましょう。
水害や水漏れ事故は適用外の住宅火災保険
一般的な火災保険で、火災による被害のほかに落雷や破裂、爆発、風害、ひょう害、雪害などに対応しています。水害と水漏れには適用外になるので注意が必要です。
さまざまなリスクをカバーする住宅総合保険
住宅火災保険の補償内容に加えて、次のような被害も適用されます。
- 車が突っ込んできて外壁が崩れてしまった
- 暴動や騒擾によって壊れてしまった
- 泥棒が侵入した際に破損してしまった
住宅火災保険と大きく異なるのは、水害にも適用されることです。また、人の過失による水漏れも対象です。
新しいタイプは保証の範囲や実損額で保証
最近ではオールリスクタイプの新しい保険も人気があります。住宅総合保険に加えて、カギの紛失や水回りのトラブル、緊急時の医療相談にも対応しています。保険会社によって独自の付帯サービスがあるので、個々に選ぶことができるのがメリットです。
外壁塗装を火災保険会社へ申請する方法と保険金の支払いまでの流れ
自然災害などが原因で建物が被害に遭ってしまったときの申請方法をみてみましょう。外壁に損害があった場合には、修理だけでなく塗装工事までをカバーできることがほとんどです。
被害箇所を専門業者に確認・工事の見積もりをしてもらう
塗装業者やリフォーム業者に、現地調査を依頼して破損箇所をチェックしてもらいます。必要な工事費用の見積もりを作成してもらいましょう。見積もりが出た時点で、契約している保険内容の免責額に達していない場合は申請することは難しいです。
必要な書類を揃えて保険会社に申請する
見積もりの作成が終わったら、保険会社に連絡して申請書類を取り寄せます。必要な書類は次の通りです。
- 保険金の請求書
- 事故の報告書
- 修理箇所の工事見積書
事故の報告書には、破損個所の写真を忘れずに添付しましょう。破損の状態が分かるもの、建物全体の外観と破損している外壁に印をつけておくと、のちの調査がスムーズにいきます。
保険会社から派遣される鑑定人による調査
必要書類を提出すると申請が完了し、保険会社から鑑定人が派遣されていきます。損害鑑定人とも呼ばれていて、被害が自然災害によるものなのか、経年によるものなのか調査をします。自然災害と判断されれば損害額が算出されます。保険金が支払われるまで、約1ヶ月ほどかかるようです。
外壁塗装を火災保険で適用されないのはどんなとき?
外壁塗装が火災保険でカバーできないこともあります。経年劣化やメンテナンス不足が原因の場合です。詳しくみていきましょう。
塗装の経年劣化が原因のとき
外壁は約10年おきに再塗装すると建物が長持ちするといわれています。一般的な塗料の寿命が約10年だからです。紫外線や風雨にさらされている外壁は日々ダメージを受けていて、塗膜が剥がれたりひび割れたりしやすくなるのです。
ひび割れがどんどん大きくなると、外壁の構造部分にも悪い影響を与えてしまいます。雨漏りの原因にもなります。定期的な塗装をおこなっていない場合には、外壁の破損・塗装を火災保険で補償してもらうことは難しいです。
苔や藻・カビの発生などのメンテナンス不足のとき
外壁に苔や藻が発生すると美観を損なうだけでなく、建物の劣化を進めてしまいます。特に日当たりの悪いところにある外壁には藻が発生しやすいです。苔や藻は水分を含んでおり、雨水なども溜めやすくなってしまいます。
黒っぽい汚れはカビのことが多いです。カビは胞子でどんどん増えていくため、一度生えてしまうとあとが大変です。自分の手が届く範囲であれば、中性洗剤を薄めて柔らかいスポンジやブラシでこするとよいでしょう。また、専門の業者に定期的に高圧洗浄をしてもらうと安心です。
外壁塗装を火災保険以外でお得におこなう方法はあるの?
外壁塗装が火災保険でカバーできない場合でも、費用を抑えて塗装工事をすることができます。塗料にはグレードや耐用年数によって費用が異なりますし、お住まいの自治体で助成金や補助制度を利用できることもあります。
グレードが低い or 水性1液の塗料を使用する
外壁用の塗料は、顔料と添加材、合成樹脂からできています。合成樹脂のグレードと水性か油性かによって費用が異なります。グレードは耐用年数ともいい、アクリル、ポリウレタン、アクリルシリコン、フッ素の順に長くなるため、費用も高くなります。
上記の塗料はさらに、水性塗料1液・2液、油性塗料溶剤1液・2液に分けることができます。1液はそのまま塗れるもの、2液は主剤と硬化剤を混ぜて使うので1〜2割程度割高になります。
水性1液→溶剤1液→溶剤2液→水性2液の順に費用は高くなります。近年人気がある塗料はシリコンですが、同じシリコンでも水性か油性かによって価格が違います。
耐用年数が長い高い塗料でトータルコストを抑える
ただし、費用が安い塗料を使用すると耐久性が低いことがデメリットになります。外壁塗装工事の頻度が多くなるので、トータルにかかるコストを抑えることが難しくなります。主な塗料の耐用年数は次の通りです。
- アクリル:5~7年
- ウレタン:8~10年
- アクリルシリコン:10~15年
- フッ素:15~20年
また、近年注目されている塗料に、ラジカル制御塗料があります。2012年に開発された新しい塗料で、塗膜を劣化させる原因物質ラジカルを制御する機能があります。そのため、おもな劣化症状であるチョーキングが起こりにくいのが特徴です。費用はアクリルシリコンよりも高いものの、耐久性はフッ素並みに長持ちします。防カビや防藻性も高く、汚れがつきにくく落ちやすい機能も備えています。
お住まいの自治体の助成金・補助金制度を使う
各自治体が実施している外壁塗装の助成金や補助金制度を利用することも検討してはいかがでしょうか。10〜20万円ほど受給できることも多いため、自己負担額を抑えることができます。助成金制度は補助金制度と比べ、条件が比較的緩いようです。
次のような目的で外壁塗装をともなう工事やリフォームをする場合は、いちどお住まいの自治体に問い合わせてみましょう。
【ヒートアイランド対策】
屋根や外壁に遮熱塗料を使用することでエアコンの使用量を減らし、屋外に排出される熱量を減らすことを目的としています。遮熱塗料は、太陽光を反射させることで熱の吸収を抑え、室内温度の上昇を防ぎます。屋根に塗ると、室内の温度を1〜3℃下げる効果があり、約10%エアコン代をカットできるといわれています。
【エコリフォーム】
省エネ対策に特化した工事が対象です。主に床や天井、外壁などの断熱改修工事、家窓やペアガラスの設置、エコキュートやエネファームなどの高効率給湯器の設置、節水性の高いトイレへの交換、太陽光発電システムの導入などが対象になります。
以下のサイトではお住まいの自治体でおこなっている助成金・補助金制度を検索することができます。【地方公共団体における住宅リフォームに係る支援制度検索サイト】
まとめ
ほとんどの人が加入している火災保険は、火災だけでなく自然災害による損害も補償されます。外壁塗装工事を火災保険でカバーするためには、3年以内の被災であること、損害額が20万円以上である必要があります。一般的な住宅火災保険では、水害は適用外ですが、住宅総合保険やオールリスクタイプならカバーしています。
経年劣化やメンテナンス不足が原因の場合、火災保険は適用外です。安い塗料よりメンテナンス性の高い塗料を使用した方が、トータルコストを抑えることができます。
加入している保険の内容や、お住まいの自治体の助成金・補助金制度を確認してみましょう。